谷崎『細雪』を20年ぶりに読んでみるテスト。
開幕のおでかけ支度場面の美しさは異常。
以下、連綿と続く見合いなどの様子をメモ。
初めて読んだ時は高1か高2くらいで、昔のヒトなのに30歳オーバーで見合いでどーたらってなんなんだろ、と激しく違和感があったのですが、まさかその時は自分がこんな紆余曲折大杉修正希望な人生送る破目になるとはマジ想定外だったという感慨は窓から投げ捨てる。
- 雪子たん(3女)スペック
30歳(物語開始時点)
和風美人。幸子(2女)・雪子・妙子でおめかしして電車に乗ると、向かいに座ってた中学生男子がみるみる顔を真っ赤にして俯く級。
高学歴(女学校→英文専修科)
婚期遅れた理由:実家が関西で資産家として名高いくらいの商売やってた→婚期の頃(20歳前後)に急に没落して父の死後解体、という流れで、来る話はたくさんあるけど物足りない物足りないでスルーしてるうちに…
先方から断られたことはナシ。
- 妙子たん(4女)スペック
25、6歳(物語開始時点)。20歳の時に駆け落ち事件やらかして小新聞に出る。駆け落ちの相手と一応結婚するつもり…
人形作家。ほぼ洋装。
※雪子は不良な妙子がいるというのが瑕といえば瑕になっており、妙子は妙子で上に嫁いでいない雪子がいるので結婚できないという関係。原則仲良しではあるのだけれど、妙子が格下の男を結婚相手に選ぼうとした時は雪子は「あんなのが弟になるのは耐えられない」と強烈に反対。
- 以前の雪子の見合い話
- 豊橋の素封家(20歳くらい。初の見合い)
田舎いくのやだ!ということで流れる
-
- 40ちょいの資産家
身辺調査で相手に深い間の女性があることが発覚。
- 41歳初婚外資系リーマン
仲介:井谷(2女のいきつけの美容院→弟の知りあい)
フランスに2年留学経験あり
北陸のどっかの国家老やってた家。実家に家屋敷+神戸に文化住宅
副業でフランス語講師もやっていて、そっちも頑張ればまあ経済的にはOKらしい。
→実家の母が精神病?らしいことが発覚。子供に影響でたらどーするんだで流れる。
※結局どういう病気なのかも不明なんですけど…すげーな昔って。
- 47歳死別農林水産省技官?
仲介:2女の同級生→社長かなんかの従兄弟
→亡妻と子供の遺影を飾った仏壇をわざわざ見せられて萎えくぽ。
このへんで妙子タンが駆け落ち相手のぼんぼんの家の元丁稚(移民枠で渡米して向うで写真の勉強をして現在は写真館経営)と結婚も想定した交際に突入。
その悪評が次第に広まって、見合い話そのものが持ち込まれなくなる。(事前身辺調査でハネられちゃうぽい)
※すげーな昔(ry
- 大垣へんの超資産家(関西でも名前が知られている)当主。死別。
仲介:長女の婿の長姉。男前なヒトで、直接の面識ないのに人を介さずに見合い話を向うに持ち込み、軽く見られて向うからスルーされる。初のあちらから「ご縁がないようで」に蒔岡家ショック。
- 47歳死別医学博士(製薬会社重役)
※雪子34歳
仲介:2女の同級生→亡妻と臈纈染めの教室で一緒+井谷
まだ相手が再婚の気持ちになってないけど、「とりあえず会うだけ」で拉致る→順調に進みかけていたんだけれど、相手から二人で会いませんかと電話が来たのを雪子が断ってしまい、試合終了。
- 46歳初婚建築家(なんとか子爵の庶子)
※雪子34歳
仲介:井谷→娘の勤め先の社長の縁
井谷が渡米直前で、細かい話にいちいち対応してらんね!と妙子のことからなにから全部ぶっちゃけ+写真見せで向うが乗り気。本気モードで結納へ。財産ねえとか色々細かいところもあれど、もうイケイケ。雪子タンも珍しくほがらか対応を頑張って無事決まる。金やら先行きの面で不安は残るけど、庶子とはいえ華族つながりというのが効いた模様。
…が、妙子、新恋人バアテンの子を妊娠→もうどうしようもなくてとにかく有馬温泉に隠す→大難産+死産のコンボ…
で、〆は結婚式は東京ということになって、雪子と二女夫婦で上京…するんだけれど、雪子が数日前からお腹壊してて、汽車の中でも下痢が続いていた、というよーわからん情景でオワリ。この終わり方、非常にわけわかんないんですがなんなんだ。
東京ついたら赤痢から物凄いことになるとかにならにゃーええんじゃがのー。
=感想=
・ビッチな妙子たんの不幸シリーズは異常!(大洪水に遭って危うく死にかける→結婚考えてた相手が医療ミス?でいきなり死亡→本人も赤痢で生死の淵までいく→妊娠+死産)
・妙子たんの駆け落ち相手の寝取られ萌えも異常。結局10年近くひっぱられて金やら信用やらさんざん妙子たんのために失って、しかも自分とこの丁稚上がりとデキられるわ、次はバアテンとかわけわからんのの子を妊娠されるとか。それでもにまにましてっから、もうええのんかええのんかとしか言いようがない。このへんのよーわからんやらしさは『卍』とかにもあったような気がする。『瘋癲』とはちょっと文脈違う気もするけれど。
・雪子タン...今の時勢ならもう一生独身だったことは確定的に明らか。とにかく自分を曲げない...ので結果的にきわめてお高いヒトに。
・二女の婿が雪子の結婚が決まった時に泣くシーンがあったような気がしていたけれど、映画のオリジナルだったと発覚。たしか役者は石坂だったとうるおぼえ。市川崑のやつだの。しかし1983年の作品とはいえ、雪子は吉永小百合だったのか...当時38歳。鶴子役でもよかったんじゃあるまいかこれは。
・記憶よりも見合い件数が少ない。物語内では4年間で5回(うち2年ばかり妙子の件で空白期間アリ)
・雪子と妙子の関係性が非常に面白い。フェミで昔シスターフッドとか一瞬流行ってた気がするけれど、そっちからなんかないのかのぅ… 仲がいいんだけれど、雪子は2女とかとは下着の貸し借りはするけど妙子とは絶対しないとかなんつーかすげえよ。
・見合いは命がけ…。2女の同級生から持ち込まれた2件は、仲人役の同級生がマジ切れして、友達としての縁が切れちゃってるぽい。あと、仲介の目上の係累から持ち込まれた話にはどうしても話が甘くなりがちで、まとまればいいけれどまとまらなかったらやっぱり後々間が悪いわけで、このへんリスクたけーなみたいな。井谷が最後まで世話しつづけたのって、そういう利害関係があんまりない話で回してたからというのもありげ。「見合い」がかなり減少してるのって、このへんもあるんだろうな…*1
・誰かの評論で、華やかな話ではあるはずなのに、やたら下痢してどうこうみたいなネタが多いとかなんとかうんぬんというの話を読んだような記憶がうっすらとあるのだけれど、アブジェがどーたらという話に持ってっていいのかなんだか間合いが不安定。まあ谷崎はヘンタイですからということでも良い気もかなりする。
=参考=
■×á@is\ðìÁÄݽ
年月入り進行表。グレート。
ラストの雪子の下痢説に色々あるけど私は谷崎氏の後書きどおり「書くのに疲れた」で尻切れトンボっぽなっただけなように思えますが。
ちょwww谷崎wwwどう考えても自分自身の代表作兼昭和文学前半戦の代表作だろうが『細雪』www真面目にやれwww
*1:関係ないけど、学部の頃の♀友達で、姐系というか性格とかそのへんが壮絶に男前なのがいて、そやつの実家に見合い話が近所から持ち込まれ、お母さんがまだまだアレは嫁に出されん!と「うちの娘にはもったいないお話で」と辞退しようとしたら、見合い話の断り方としてなんか文脈がある表現に嵌ったらしく(よくわからんけど、自分とこの娘より格下?な相手と踏んで断わろうとしてるようにとられたらしい)、めちゃ逆ギレされてえらい目に遭ったらすいとかなんとか聞いた記憶。あの時点で見合いとかやるキャラでは全然まったくさっぱりない女子だったんで...いやほんとに端的にムリ...