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ぼげーとNHK見てたら寺島しのぶが無双キメててびびった「TAROの塔」第一話

TAROの塔 DVD-BOX

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ここ20年、あんまTV見ないライフを満喫していたのですが、色々生活環境の変化から去年からWBCと「相棒」(主にミッチー萌えだけど、脚本のレベルが安定してるのも大きい)、旅情とか交えつつもっぱら過去の復讐なんかで殺人事件が起こったりする2時間ドラマの再放送(主に船越物。こちらは反復の心地よさ)くらいは見るようになっためも子です。だって、たまーにチラ見してもセリフで説明させてばっかで、役者が演技する暇がないのばっかなんだもん!

というわけで、昨今の日本のTVドラマはよう知らんのですが、土曜におでかけ先でNHK見てたら、「TAROの塔」という岡本太郎生誕100年を記念したドラマをなんかやってて、ほげーとみてるうちに引き込まれちゃいました。
TAROの塔 | NHK 土曜ドラマ
松尾スズキ岡本太郎に激似で頑張ってる他、いちいち本人にどこかしら似てる名優そろえた本気制作なんだけど、殊に岡本かの子役の寺島しのぶが大変なことになっちょりました。
エラい凄みのある女優さんになったらしいという話は仄聞しつつ、邦画見る習慣がないので「キャタピラー」も未見なのですが、「芸術」なるものになんでかしらんけどトチ狂って、人生大爆走なかの子を異様に生き生きと演じてました。
特に印象的だったのは、かの子が若い学生(成宮寛貴)を家に引き込んで、旦那の岡本一平田辺誠一)と太郎とすき焼きを食べる場面。
岡本一平はもともと画家志望だったけどいきなりデキ婚することになってそうも言ってらんなくなって、朝日新聞で時評漫画とかやってる。それで評価もされてるんだけど、なにせかの子は芸術季違いやから、そのへんで齟齬ができちゃったという流れがこのシーンの前にあったりするんですが、短歌つながりでかの子と仲良くなった学生はまだ学生やからちくちくそのへんを言うんですね。ちょっとヤな感じですが、一平は華麗にスルーして、かの子の行く末を見届けたいからよそへ連れて行かないでくれ的なことを言う。
で、酔っぱらったあたりでかの子が学生が2階連れてくんですが、学生がかの子がこんな所帯じみたことさせられてて可哀そうだとか寝言言い出すんですけど、それに対して言うのが「あの人は私を愛しているだけ」的なセリフ。旦那は自分のこと(ていうか「芸術」)を理解してないし、できもしないけど、自分を愛してるから可哀そうだから居てやってるので、お前を引っ張り込んでいちゃこらしても無問題ってことデスか!? かの子HIDEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!
で、お茶の間に残った父と息子。さすがに真上じゃないっぽいものの、どーも2階でなにやらやってる気配がするんですね。息子はこの時点ではなにがなんだかわかってないけど、父はわかりすぎるほどわかってる、という微妙な空気の中、ここで息子は父に芸術ってなんなん?て問い、父は「芸術とは世間や常識にノンと言うことだ」、「芸術家とは、生きて地獄を見る人のことだ」と淡々と明快に説明…
なんという鬼畜展開…脚本家KOEEEEEEEEEEEEEE!!
ここでこういう説明する父一平もクレイジーすぎるです…
脚本がほんとに色々諸々よくできてて、かの子周りだと2シーンしか出てこない両親(平田満余貴美子)のなんかタガが外れてる無関心っぷりとか、かの子や一平の甘さ、ずるさ(夫婦関係が変化していく流れ、学生との出会い、これまた関係の変質やら破綻の経緯)周りの描写が、ほんとにおもしろかったです。そのへん単純な「求道者的な芸術家」にしなかったのが良かった。
公式サイトの脚本・制作・演出のコメントがすごく悲壮感漂う方向に行ってるんですが、いやほんまこりゃ大変だったと思います…
TAROの塔 | みどころ
ほんっとにたまたま見たのですけど、人が本気出して作ったものを見るのはいいものですなという思いを新たにしましたです。
 
ちなみに寺島無双を受けて立った太郎役の子役(高澤父母道)がまた大変な子で、2004年生まれだからまだ7歳なはずなんですが、完全に役を理解してやってるとしか見えない。学校の場面とかは上手な子役相応なんですが、寺島との絡みになるとですね。こりゃこの子は将来「岡本太郎」になる子どもだとしか見えない。いやいくらなんでも岡本太郎がどういう人でとか、かの子のクレイジーっぷりの意味とか諸々わかる年ではないと思うんだけど…なにこのマジック。
たとえばですね、かの子が「この子は画家にする!」て言いだして、好きなものを描けって太郎に紙と絵具とかを与えるんですわ。太郎が子供っぽい描き方でかの子を描く。そりゃこんくらいの年の子ならまずお母さん描きますな。で、かの子が見る。気にいらない。絵具をとってしゃかしゃか混ぜて、赤〜濃紅くらいの色で自分の額から頬へべっとり線を引いて、「これが私です」って言うんですわ。で、太郎はどうするかというと、「お母さんが燃えている!」つーて、真っ赤なクレヨンで自分の描いた絵をごしごし塗りつぶす。塗りつぶす太郎を見る寺島の表情がまた大変なことに、みたいな流れで。
…普通の子供だったら、寺島が自分の顔に絵具塗るとこだけでマジ泣きしながら逃亡するとこだと思う…いや、大人でも危ないわ…
て、この場面、本当は太郎に塗る予定だったのを、寺島しのぶが変更入れたらすい。
寺島しのぶ:「自分の顔を塗りたくなった」 岡本太郎の母・かの子を熱演 NHK「TAROの塔」 - MANTANWEB(まんたんウェブ)

岡本太郎に多大な影響を与えた母・かの子を熱演した寺島しのぶさん(38)は、1話で太郎に絵を描かせるシーンで「台本には(かの子が絵の具で)太郎の顔を赤く塗ると書いてあったんですけど、どうしても自分の顔を塗りたくなっちゃった。(監督のOKが出て)一発勝負で描いたんですけど、意外とアーティスティックに描けて、ちょっと自画自賛という感じです」と笑顔で明かした。

…笑顔で明かすなあああああ! しのぶ…恐ろしい子…!(白目)
 
そんなこんなで、かくも強烈なかたちで父から「ノン」、母から「モノの本質見ること」を受け継いじゃった人が作ったもの、として見ると、なにがなんだかわけわからん岡本太郎の数々の作品が、なんかちょっとわかりそうな初回ではありました。というか現代美術全体がなんかちょっと近くなった気がする…
ただこれ、全4回なんで、開幕でこれだけ寺島しのぶが無双キメると、全体のバランスとしてどうなるんだロという不安もありますが、たぶん他のキャストも超本気出していると思うので、引き続き見てみたいと思います。というか「キャタピラー」再映かかったら見に行かねば。以後、無限のリスペクトをこめて「しのぶ様」とお呼びしたいと思います。
ちなみに主題歌は美輪先生がピアフの「水に流して」新規録音しとります。ゴージャス!
 
それにしてもしのぶ様見てて、寺山修二の映画を諸々思い出しました。て、超大昔に「田園に死す」と「草迷宮」くらい見たっきりですが。
寺山が生きていればまだ70代なかば、きっとしのぶ様と組んでがんがんおもろい映画撮ったんではないかと思ってみたり…いやほんま、死んでる場合じゃないYO!
寺山はとにかく、宇野千代『生きていく私』へんを素材に、たぶん千代的にはそれなり以上に寝たかったけどどうにもそこまで行けなかった対小林秀雄戦(小林も嫌いならつきあい切ればいいものを、そっちにはいかずにヘンな絡み方とかしてよくわからん方向に膠着してた感じ)を中心に、「結局男と女ってなんなん!?」なあたりをしのぶ様にやっていただけると、少なくともしのぶ様が出るに値する脚本&演出レベルであれば、どうにも色恋沙汰に才能のないめも子にもわかりそうで素敵…
参考:千代先生ェ...
「第24回 性欲は宇宙の意志――梶井基次郎の巻(後編)」 日刊!ニュースな本棚|Excite エキサイト : ブックス(文学・書評・本のニュース)

=おまけ=
たしか岡本太郎の作品で「ノン」てなんかあったような…とぐぐったらあった。なんかKAWAII。

(日本美術工芸 株式会社HPより転載)