仕事用のめもとか。

メディア等気になることを適当に。

自分が学部生の頃に読んで爾後20年ねっこになってくれた本を晒してみる

なんかこんなのがあったので。
強くなりたい新大学生が本当に読むべき本100冊
20年前、ニューアカ最後の世代...のしっぽの残りかすくらいの時期に学生やってためも子的には色々感慨深いものがありました。
うーん...宮台結構あるのに大澤入ってないのか...「第三者の審級」とか最近の人は言わんのですかねえ。あれすげー便利なのに。便利すぎてヤバイくらい。ラカン解説部門でも新宮一成入ってないのか。ていうかジジェクないじゃん!!あれはどう考えても「原典」じゃないと思うんだけど...えーッ
懐かしのバルトクリステヴァ系統が入ってないのは納得できるんですが、フーコー解説本入ってないとかほんとうに隔世の感がございます。『言葉と物』読まなくても思想をしてるフリしていいのかゼロ年代は...なんというチートモード。
ていうか、フーコー触らずに環境管理型権力どーたら言うとか、相手がフーコーそれなりに読んでたら即死確定じゃないか...てけとなフーコー解説本と、『性の歴史』1巻の序章だけでも読んで!あそこはガチで面白いしわかりやすいから!(でもあそこだけでフーコー語るとそれはそれで即死。アレ読んで解説本組み合わせて読んだフリしましょう)
その他つらつら眺めて、個人的には『花咲く乙女たちのキンピラゴボウ』は、女性の性(情欲とか身体とか諸々含めて)の問題をあますところなく解説した日本最強のフェミ本だと思うので、あってよかった感はあります。なぜあんな文体で書いちゃったんだ橋本治っていうか、橋本治なんでアレはアレでしゃーないんだけどもにょもにょ。
100冊リストというのは微妙な企画ではないかというのはおっしゃるとおりで、大学で学ぶべきなのは「より効率よく自分の問いに接近できる本を探す」技術であり、そもそもバラバラの名著100冊とか意味ないわけで、時系列をからめた相関図状態で書物と書物が、思想と思想がからまりあって複雑怪奇に系をなしているるマップが必要なだと思うノ〜...

でもそんなんどーやってつくるんかようわからんので(どう考えてもバカでかくなりそうだし)、とりあえず、つらつらと思い出せる範囲で学部の頃に読んだ本でその後他の本を読んだりうにうに考える上でモノサシとなったブツを挙げてみるですよ。なんか前にも暑苦しく語ったこともあるよーな気もするし、オースティンの『言語と行為』とかすごい好きだけど、文脈が特殊な本を外したらちょっぴりになっちゃいましたが。
ちなみに高校の部で読んだもので、その後根幹になったのは三島由紀夫の「豊穣の海」4部作。「(近代的)主体とか突き詰めちゃった果ては最低最悪の地獄落ち確定なんで、全力で回避セヨ」なことがアホでもよくわかる名作です。特に最終巻『天人五衰』、華麗文体ごとなにもかも剥落していく感は凄まじい。こういう読み方が正当かどうかはしらんですが。あ、小説としては『愛の渇き』とか中編風俗モノの方が優れていると思います。

「現実」とはなにか/『エスノメソドロジー 社会学的思考の解体』(せりか書房

エスノメソドロジー―社会学的思考の解体

エスノメソドロジー―社会学的思考の解体


特に「Kは精神病だ」(ドロシー・E・スミス)。
これ、スミスが「身近にいた精神病者について書いてみてちょ」と学生に課題を出して上がってきたレポートのひとつが、あまりにも不出来というか...「精神病のKって子」について書かれたレポートではなく、「Kという女の子を回りの子らが『あの子なんかおかしくない?』てちまちまちまちまはぶった結果、ほんとにおかしくなったっぽい過程」について書かれたレポートとして読めちゃうんですけどナニコレ、という話。
あとガーフィンケルの「アグネス論文」(性同一性障害のアグネスたんが、都会にオンナノコ☆として出てきて、どーやってオンナノコのフリをし続けてたか、その戦略戦術の詳細を分析)他色々。ポルナーの「受刑者コード」も面白かったですが、要するにこの人ら、なにがやりたいかというと「ウチらはどーやって現実を当たり前のものとして生きてるノ?」てあたりで。
なので、普通っちゃ普通なんですよ。構築主義とか言わんでも、フツーの人でもそげなこと考えるときはあるし。
でも、事例としてうまいことそのへん説明しやすいのをひっぱってきて、一生かけてこのへんこねくり回してやってる人らが書いてることなんで、面白いです。翻訳は堅めじゃありますが。
社会学に興味のない子でも、一応目を通しておいて、こういう考え方もあるねんなーちゅうことをどっか片隅に置いておいたら、なんかの役に立つこともあるかもしれんです。
つか、はてなー的にエスノは相性いいと思うんですが、いまいち言及されてっとこ見たことないのよねー。ゴフマンは儀礼的無関心だけは引用されてるぽですが。ちなみにゴフマンとエスノは、同じ山を別ルートから登ろうとしてる...けど、山がでかすぎてほんとに、同じ山なのか定かではない、くらいの関係で自分は把握してます。理論的目標とかアプローチの仕方とか、近いのは近いんだけど、ゴフマンが単独者すぎてわけわかんないのよねー。
これ読んで面白かったらオススメの本、というのは実はちょっとあんまいいのが思い当たらないのですが(エスノ本は色々あるけど、それぞれ文脈あるんで)、折々「これはこーいうことか」で腑に落ちることがあると思います。
あ、でも注意事項が一つ。
エスノの考え方を学ぶと、人によってはヲチャ技術が飛躍的に向上するというか、徴候として読み取れるものが高精細になるというかなんというかなんですが、それは魔境でありダークサイドです。そっちに行っても中二病こじらせるだけです。学とはそういうものではありません。
自分が場から浮いてる居心地の悪さを、ヲチることで誤魔化すとかみっともなさすぎるのでそれだけは止めましょう。三島の「豊穣の海」的には、人生どん詰まりの最後の最後でぐうの音もでないかたちに固められて「結局脳内だけの人生でしたねpgr」とかされるですよ...あの寺は罠だから行っちゃダメって言ったのにー!

メディアとはなにか/『メディアとしての電話』(吉見俊哉ほか)

メディアとしての電話

メディアとしての電話


いわゆるメディアの考古学系...なんですが、昭和の時代、イエデンというか固定電話の使われ方の変遷を調査に基づいて追ったもので、コレだけ読んでも大満足ですが、濱野本と往復読みしたりするとなお味わいぶかいです。あと生まれてこのかた諸々のメディア体験を振り返ってみたり、親とかじーちゃんばーちゃんに昔はどんな風に使ってたかプチ聞き取りしたりとか、話を自分で広げまくれるという意味でも非常な非常な名著です。ミスタイプではありません。
もっとゴリゴリ考古学に萌えたい子はキットラーとかいっとけばいいと思います。ここ、難易度の段差が異常に激しいけど。キットラーいけたらフーコーでもラカンでも好きなだけいけるとこまでいっちゃってください。

私とはなにか/『<私>のメタフィジックス』『<魂>に対する態度』(永井均

「魂」に対する態度

「魂」に対する態度


いわゆる哲学本がほんとにダメで、訳語はほんとに平易にしてある『イデーン』とか目次開いただけで異常に眠くなるダメなワタクシですが、このへんは大興奮。
でもしばらく再読してないので、ちゃんと語れません...どっか家にあるはずなんで出直してくるですだ。

歴史とはなにか/『柳生忍法帖』『魔界転生』『柳生十兵衛死す』(山田風太郎

柳生忍法帖(上) 山田風太郎忍法帖(9) (講談社文庫)

柳生忍法帖(上) 山田風太郎忍法帖(9) (講談社文庫)

柳生忍法帖(下) 山田風太郎忍法帖(10) (講談社文庫)

柳生忍法帖(下) 山田風太郎忍法帖(10) (講談社文庫)

魔界転生(上) 山田風太郎忍法帖(6) (講談社文庫)

魔界転生(上) 山田風太郎忍法帖(6) (講談社文庫)

魔界転生(下) 山田風太郎忍法帖(7) (講談社文庫)

魔界転生(下) 山田風太郎忍法帖(7) (講談社文庫)

柳生十兵衛死す〈上〉 (小学館文庫―時代・歴史傑作シリーズ)

柳生十兵衛死す〈上〉 (小学館文庫―時代・歴史傑作シリーズ)

柳生十兵衛死す〈下〉 (小学館文庫―時代・歴史傑作シリーズ)

柳生十兵衛死す〈下〉 (小学館文庫―時代・歴史傑作シリーズ)


いわゆる十兵衛三部作。
フツーに読んでも大傑作ですが、「『時代』を生きるってどういうことか」という問いをなんとなーくぶらさげて↑の順番に読むと、2作目の途中でうあああああああと腰が抜けます。今あのときの衝撃を思い出しても腰が抜けます。うあああああああ。
あと、『死す』の最後でなぜこういうオチになっているのか、あるいはせざるをえないのか、山風ですらここが限界なのかと色々思いをいたすことになります。
マーティン・ジェイの『アドルノ』を併せて読むとなおベターです☆
アドルノ (岩波現代文庫)

アドルノ (岩波現代文庫)

スローターハウス5』(ヴォネガット


すべては美しく、なにもそれを傷つけたりはしないのです。
第二次世界大戦最大級のドレスデン大空襲とまでは全然いかなくても、生きてればそれなりの危機には出くわすこともあるので。
ダークサイドにいきかねない甘さがあるのは否定できませんが、世界を肯定するためのねっこをどっかで確保することも大事なのです。

『シティーズ・オブ・ザ・レッドナイト』(バロウズ

シティーズ・オブ・ザ・レッド・ナイト

シティーズ・オブ・ザ・レッド・ナイト

...なにもかも懐かしい...