野島美保『人はなぜ形のないものを買うのか』ぷちレビュー
※正月に実家でめもめもにゃしてたのを今頃うp...すみませんすみません。
- 作者: 野島美保
- 出版社/メーカー: エヌティティ出版
- 発売日: 2008/09/29
- メディア: 単行本
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名著だ名著だ、ネトゲやアバターサービスだけじゃなくてねとわくサービスに関心あるヒト全般なら超必読っつうか読んでるの前提で今後話が回る勢いだと言いながら、ぜんぜんレビューしてなかったのですが、正月休みにまとめてめもめもにゃーですのー。
著者は経営学とかやりつつ、なぜかネトゲにはまり、しゃーないので研究してしまった方ぽいのですが、中で、「夜中にむらむらとパチンコゲームをやりたくなったのでハンゲの無料ゲーやってたはずが気がついたらハンゲのあばたーアイテムに5000円以上突っ込んでた」(p.115-120)というエピソードを華麗に披露されてて茶噴いたデス。
自分もPSO、UO、FFXI、SLと累計プレイ時間とったら確実に4桁超えてる級ではあるのですが(まだ四捨五入しても5桁には行ってない・・・と思いたい)、月額課金型まったり年単位で定住する遊びしかしない性格なので、なんつーか、姐を感じたですよ。私の方が年上ですが。
ただ、ひっじょーに残念なのはRMT絡みの件。
このへんはあんま気合入れずに新清士図式流れでさっくり概要まとめてあるんですが、従来のMMORPGのRMTとSecond Lifeなどプレイヤー間のUCC商売をつなげてひとくくりに「RMT」として丸めてあるのは、全めも子が号泣。
ねとげにおける農場問題とか、農場に対応するためのゲームバランスの締め付けやら、ユーザー間の信頼の低下やらもうほんっとにたくさんある諸々の問題除いても、bot放流してゼニーうまー!と、泣きながらInkscapeやらGIMPいじくってLSL勉強してしこしこ作ったものをSL内で売るUCC取引は本質的に異なる活動でありますんで、ちゃんとそのへんのお金やら権利関係話がわかる方に切り分けしてほしかったです。この本で切り分けされてれば、少なくとも国内ではそれがデファクト・スタンダードになったと思うし。
まあ、アバターサービスでまともなUCC取引できる状態にあるのはSLくらいなんで、例外中の例外判定されてるんかもしれないですが。あれ?Weblinも実装されてんだっけ・・・なんかこのへんうろ覚えですが、是非次回作ではユーザー間取引の話もがんがんお願いしますデス。小額決済が国内ではアレすぎてコレなんですが、そのへんどっかがクリアしたらカカッと行く可能性はあるしにゃー。そいや携帯でマイクロペイメントできる韓国はそのへんどうなってるんだろ。市民記者記事に小額寄付とかしてたんだから、ナイス動画にもしてそげな予感がしつつも、どうなっちょるんか謎。
とかって前説はこのへんにして、自分的に萌えたポイントなんぞを。
■テーマ
□物理的法則から開放された仮想世界において、私達は何を求めるのか。(p.8)
#単に限定的な経験の領域でごにょごにょ研究するだけじゃなくて、ヒトのあり方普遍にも降りていける切り口になるんでねえべかという発想でーということですね。
□適正な課金システムを構築することで、もうちょっと商売の幅を広げられんかいのーっていうか、そうすべきなんだけど、どう考えたらええがにいくんかの〜みたいなビジネスモデル話。
#基本、月額課金型はお金取らなさすぎ、アイテム課金型も色々難しいよねー、みたいな。
■主な指摘
売り切り型の物販モデルが期待値を高めるビジネスであるのに対して、サービスモデルでは、継続することで生まれる価値が重要となる。継続する価値として代表的なのは、ユーザーコミュニティの価値である。友達でいるということや人間関係は持続してこそ価値があるからだ。(p.19)
□大事なのは「居場所」感(p.30〜31)
ネットコミュニティ内でのコミュニケーションは「有益な情報を交換」することよりも、井戸端会議的なトークが中心。「ここに属している」感が大切。
事例:SNS。日記を書いた事がなくても、SNSで日記を書いて他の人々と共有すると楽しい。
例:『メイプルストーリー』のTVCM。苦楽を共にしたお友達とずっと一緒にいるのー!というメッセージ
#PSO(2000年・ソニックチーム)で、プログラマさんが描いたイラストがポスターだったかなんかに採用されていたのだけれど、ゲーム内のキャラクターがこちらを振り返りながら向こうに向かって走っていて、手前の一人がこちら側に手を差し伸べてる構図のがあったのだけれど、サービス側が提示するビジュアルイメージとして最強だよわーと思った遠い記憶。。。
分析例:ニコ動とYouTube、Gyao、Yahoo!動画のユーザーの価値分析(p38-43)
利便性・新奇性・コミュニティ・UCC+有料利用意図を5段階評価させた調査。
CtoCがBtoCより利便性で高評価。
ニコ動が新奇性・コミュニティで突出し、有料利用意図ももっとも高い。滞在時間もアホほど長い3時間14分。
→有料利用意図と関連のある変数はコミュニティとUCC。
「便利だからお金を払うのではなく、動画が面白いからお金を払うのでもない。他のユーザーと交流するのが楽しいから、書き込みをしたり投稿をしたりするのが楽しいから(UCC)、お金を払おうと思う」(p.43)
#このあたりの話はねずみーなど体験商売、いわゆる「モノより思い出」マーケティング参照のこと。
#そういえばその昔、『愛を語る夜の宴』ちゅーおフランス小説があったのー! ピクニックはどこへ行くかより誰と行くかが大切なのー!
「インターネット上で他人と遊ぶということは、始終チャットをすることを意味するわけではない。顧客に交流させようと躍起になっても、企業お仕着せのコミュニケーションは実を結ばないだろう。顧客が求めているのは、直接的なコミュニケーションではなくむしろ居場所ではないかと思う。現実世界の肩書と離れた所で、ほどよい距離感をもって他人と接することを望んでいるのだ。」(p.117)
#このへん、衝撃のハンゲ話のあたりなんですが、そいえば大吉SIMの某紳士が、パチンコのあり方(喧騒、ありえないくらい狭い個体間距離、だが視線はがっつり目の前の画面に)が日本人の共同性のあり方を象徴してるんちゃうかとお話されてたような。
#自分のプレイ経験からしても「べったりトークじゃなくて距離感大事」のは首がもげそうな勢いで激しく同意。毎日毎日インしたお!で、即どっか行くかー!より、ちょっと合成とか釣り行ったり、ちょっとれれる上げに行ったり、ちょこまかやりながらトークして、「暇じゃのー」「暇じゃねぇ」とかタイミングが合ったらオズトロヤ遊びに行って、なんかしらんけど現人神いるおー!とかはわはわしてるうちに神にめっかってウギャー!とか。楽しかったのぅ。
#ただし、開発+運営側から見れば器は用意できるし、そこに色々工夫を盛り込むこともできるけど、うまいことそこにコミュニティが根付いてくれるかどうかはユーザーにかかってる、というあたりが難しいところですが。
□色々調査結果
ちょとこのへん、後日またまとめて。
第1部 デジタルコンテンツの収益モデル
第1章 デジタルコンテンツのビジネス問題
第2章 価値分析
第3章 時系列分析とタイミング
第4章 収益性分析
第2部 形のないものを売る仮想世界サービス
第5章 仮想世界の設計理念
第6章 オンラインゲームの事例
第7章 広告モデル
第3部 仮想世界のマネジメント
第8章 仮想世界の生成条件
第9章 アイデンティティ
第10章 コミュニティ
第11章 関係性の創出と公平性
第12章 仮想世界の経済システム