仕事用のめもとか。

メディア等気になることを適当に。

『この世界の片隅に』をようやく見た。

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広島市出身、呉にも親戚おって子供の頃は遊びに行ったりしよったけぇ、はよ見よう見よう思いよったんじゃけど、なかなか忙しゅうていかれんかったのが、ようやく見れました。

以下雑な雑感。

 

 

・脚本、演出、絵、音楽、考証どれをとっても素晴らしいけれど、能年玲奈の演技がずば抜けていて、全部持っていった感ある。リアル北島マヤといえば大竹しのぶだったけど、もはや大竹より北島マヤ感あるわ。のんちゃん、恐ろしい子…!(白眼)

・たまたま出かけにバタバタして、うっかり化粧しそびれてしまい、ノーファンデノーアイメイクで見に行ってしもうたんけど、それが正解だった。フィルムマスカラとかしてったら全部落ちるわ、ファンデ塗ってれば目から下どろどろになってるわこんなん。隣のアラサー紳士もその向こうも後半決壊しまくってたようで、別に私だけの話じゃないけれど。

・じゃあ感動モノかと言えば、全然違う。「感動させる」「泣かせる」演出にはものすごく抑制的で、むしろ感動させるつもりはないんじゃないのかと思う。じゃあ見てるこっちが勝手に感動してるのか、といえばそれもよくわからん。だが情動はめっちゃ揺らされる。なんだこれ。

・「原爆物」ではない(爆心地から30km離れた呉の山まであれだけの衝撃波来たんかとびびったけど、原爆の直接的な描写はものすごく少ない。ちなみに東京だと、大手町ー横浜/立川/所沢/幕張あたりが30km圏らしい。)

ひょっとしたら「戦争物」でもないのかもしれない。ネットで「凄い映画なんだけど、なにが凄いのかめっちゃ言語化しにくい」的なコメントどっかで見た気がするんだけど、ほんとにそう思う。なんで言語化しにくいかというと、人生とか生きてるということとかそういう「ものすごくテーマが馬鹿でかすぎてちょっとやそっとじゃ触れん物」だからかもしれん。語りえぬものについては、沈黙しなければならないって、ばっちゃがゆってた!

・とか言いつつ、戦争描写マジやばい。序盤の砲弾のかけらが落ちてくるというか、地面に刺さりに来る描写もたいがいびびったけれど、機銃掃射も怖かった。
昭和15年生まれの父から、防空壕に入っとったら目の前の道をバババッと機銃掃射していきよったのを見た記憶があるとか聞いたことがあるけれど、あんな怖いもんだとは…
機銃掃射的な場面は戦争映画だったらまあよくある場面で、お約束として流すとこじゃないですか(主人公は普通アレではやられんし)。生まれて初めて怖い思うたわ。立川シネマシティの極音で見たせいかもしらんけど、なんだろなー…戦闘機から見た視界と、地上におる者の視界の組み合わせ方なんかしら。

・晴美ちゃんがめっちゃ可愛いんだけど、おじいちゃんが「馬力が足りんエンジンを改良して改良して2000馬力にしたんじゃけ(誉 (エンジン) - Wikipediaのことでいいんかな)、わしらは負けやせん」的なことを言う時に、「敵は何馬力なの?」と繰り返し問うたり、呉の港見下ろして「戦艦ばっかりで空母がおらん」とか、ぐう畜発言を地味にかましてきてた気がする(初見なので間違ってる可能性アリ)。

 

 

=広島民でないと気がつきにくいかもしれないあれこれ=

能年玲奈広島弁が亡くなった祖母の広島弁に相当近くてびっくりする。単に広島弁違和感なく喋ってるだけではないと思う。

・序盤のお遣いシーンのお届け先が中島本町なんだけど、あのへんが現在の平和公園にあたります。つうか平和公園のあたりって、投下前は普通に人住んでたんだよな…あのへんはほぼ即死圏やから…

・序盤のお遣いシーンと終盤で広島の橋が出て来るけど、あれは原爆投下目標の相生橋です(現在の原爆ドームも見えるというか、かなりしっかり出てくる)。原爆投下目標であること、橋の名、両方に意味を持たせてある気がします。
・序盤の江波から草津のおばあちゃんちに行く場面、昔は干潮の時に渡れてたんかいとびっくりした。干潟がそんなに広く、川が浅かったということは、大雨になれば川が溢れるわけで、現在は草津の傍を流れる川は太田川放水路として整備されてます。
・呉の港って今もドックあったり海自の基地あるけど、そんなどかーんと広い港ではないので、あんなに軍艦うようよしとったんかい!とべっくら。そりゃ大和も建造した軍港という知識はあったけど。アメリカさんサイドも、瀬戸内海の制空権とったらまず呉を潰しに来ますわな…

闇市行って迷子になったすずさんが、人に道を聞くのに、長迫から来たって言ってた気がするんだけど、灰ヶ峰の方がおうちなのに方角違いますやん??てなった。港を背にして呉に向かうと、だいたい真正面が灰ヶ峰、長迫は右の斜め奥という感じで。なんか勘違いしとるかもしれんけど、なんで長迫言ってたんだろ。根本的に聞き間違い?
・19年の夏だったと思うけど、夏に墓地の傍を通り過ぎるカットで、白い盆灯籠がたくさん立てられてるけど、新盆には白い盆灯籠、そうではないのにはカラフルな盆灯籠立てるのが広島の習慣なので、以下お察しください。
・被爆者(投下後に市内に入った入市被爆者含む)の肌に紫斑が出るのは、典型的な原爆症の症状です。発症=死とは限りませんが、死亡フラグ感は否めません…

※紫斑出るとこまで行ったけれど、助かった方の手記など。

被爆者の手記―紙碑― | HIROSHIMA SPEAKS OUT


ところで、この作品も聖地巡礼盛り上がりそうというか、ここまで考証やってるんで、広島〜呉うろついていただきたくてしょうがないわけです。つうて、北條家のあたりは行くの結構たいへんだし、普通の住宅地なんでアレですが。
呉観光と言えばJR呉駅降りてすぐの大和ミュージアム、てつのくじら館が鉄板ですが、個人的には入船山記念館もちっさいけど建物や意匠が面白いのでオススメです。
あとは事前申し込み必要なんで自分も見たことないけど、旧鎮守府庁舎とか、一泊追加前提になるけれど、ついでに江田島行って兵学校とかね。
食べ物は、私は海軍カレーとか肉じゃがはそこまで美味しいと思ったことはないですが。吉田健一が呉に泊まった時のことをエッセイで書いてて、ハゲの煮付けとかデビラ(デベラ)炙ったのとか激賞してて、確かにハゲとデビラはほんまに美味しいと頷いた記憶があるけれど、どこで食べれるのかは知らん。基本、あのへんは家で食べるもんだしなー…
冬の瀬戸内海の多島美は本当に素晴らしいので、作品中で船に乗るシーンはないですが、島の方にもいらっしゃるとよろしいかと。

www.kure-kankou.jp