仕事用のめもとか。

メディア等気になることを適当に。

スタートレックにおける人工人格の扱い。

404 Blog Not Found:ニジゲンとサンジゲンの見分け方
スタートレックに関する言及がちとひっかかったので、航星日誌に勝手に補足するのです。

スタートレック、20世紀のアメリカ人が社会やらリアリティやらなにやらをどう想像していたかの宝庫で、よくねとわく文化分析本にも引用されてるもんでもあります。なにせSFですから、TNGデータ少佐に関するエピソード回りで人工知能やら「人間」の定義、ホロデッキで仮想現実ネタにひっかけられるし。
というわけで、人工知能というか人工人格というかで、いろんなキャラクターのバリエーションがあるのですよ。知ってる範囲でてきとーにご紹介。

TNG(1987-1994年)編=
データ少佐(アンドロイド)
スン博士が作った6体(たぶん)のアンドロイドのうちの1つ。背中のボタン押されると緊急停止したり、カツラ?を取るとメカメカしい内部が丸出しになったり。
劇中ではTOSで言うところのスポック枠。原則空気読めません。「意志/意識」はあるけれど「感情」はない(オプションで感情チップを搭載するエピソードもある)。でも感情はないと言いながら人間のようになりたいという意志持っていたり、ちらっと男女交際してたり、ぐだぐだ感は満載。
データの「兄」であるロア(感情チップを搭載し、悪意を持つ)はわりとどうでもいいんですが、データが自身の(ほぼ)複製として作ったアンドロイド、ラルのエピソードは全米が字義通りに号泣(第64話「アンドロイドのめざめ」(The Offspring):)。
第35話「人間の条件」(The Measure of a man)で、複製するために解体されそうになり、裁判の結果「人権」を認められる。宇宙艦隊退官後は地球で数学だったかの教授になった設定。
しかしこれ、かなり社会的な影響が大きい判例な予感がするんだけど、辺境法廷でさくっと済ませて良かったんだろうか。この裁判の時、データ級のアンドロイドはまだ数体しかいない&開発者行方不明で後継機種開発のメドもまったく立ってないのですが、量産されるようになって24時間デスマーチ上等の労働力に社会が依存するようになってから裁判という流れになってたら、そのへんどうなるか相当わからん部分もありますね。
Star Trek: U.S.S. Kyushu - TNG Episode Guide (No.64 "The Offspring")
Star Trek: U.S.S. Kyushu - TNG Episode Guide (No.35 "The Measure of a Man")

・モリアーティ教授(ホロデッキ内人格)
ホロデッキ(物質転送システム?と映像を組み合わせた、触って踊れるバーチャル・リアリティ空間)のシャーロック・ホームズごっこプログラムで遊んでいる時に、「データを負かすことのできる強い敵」をリクエストしたばっかりに出現。
データと同等の知能と意識、強い「意志」、さらに人間とほぼ変わらない身体構造と感情を持つ(たぶん)けれど、ホロデッキから出られないのが弱点。
Star Trek: U.S.S. Kyushu - TNG Episode Guide (No.29 "Elementary, Dear Data")
Star Trek: U.S.S. Kyushu - TNG Episode Guide (No.138 "Ship in a Bottle")

・ミヌエット(ホロデッキ内コンテンツ)
不思議ちゃん星人が作成したホロデッキ内プログラム。ジャズバーで飲んでるねーさん型。「意志」はないぽいけれど、他のホロデッキ・プログラムと違う「なにか」(あえて言うなら存在感?)を持ち、ライカーが萌えまくり。
「俺の嫁」には最適なタイプだと思われますが、個別幻想の中で「嫁」扱いするだけならとにかく、社会的存在としてデータのように「人権」得るとこまでいけるかといえばたぶんムリ。
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ホロデッキ内エンタープライズクルー(ホロデッキ内コンテンツ)
おそらく全シリーズ一非コミュな機関部員・バークレー用のプログラム。ちょーイケてるモテモテなバークレーたんを、エンタープライズのクルーの外見をコピーしたホロデッキ内キャラクターがよってたかってちやほやしてくれるという素敵すぎるコンテンツに嵌ってるうちに勤務がおろそかになり、リアルのクルーに探しにこられてバレてしまい、マジギレされるという楽しいエピソードがあるです。
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=VOY(1995-2001年)編=
・ホロドクター(ホロデッキ内人格)
もともとは医務室備え付けの補助的なプログラムだったけれど、医療部員全員死亡で常駐する羽目になった口うるさい偏屈性格なおっさんプログラム。医務室から出られない。その後色々あるらしいですが、VOYはほとんど見てないのでよく知りません。ウィキペディアの記述みると、どっかの星で「人権」的なものを獲得したっぽい。
ドクター (スタートレック) - Wikipedia

ちょっと意志、意識、人格という言葉の定義がアレですが、そっちの話は詳しいところはようわからんので適当に流してください。
モリアーティ教授は、自分がホロデッキ内プログラムであることを認識し、なおかつホロデッキから外に出たいと要求する、プログラムとして想定外の行動をするレベルにいっちゃってて、ホロドクターはプログラムされた性格に従ってかなり複雑な反応を返すことができるレベル、ミヌエットは世界観に合わせて適当になんちゃって自律で動いてるけれど(ここまでたぶん通常のホロデッキ内プログラム)通常のプログラムより反応や振る舞いが高精細で「リアリティがある」レベル、バークレー用のクルーのコピーはバークレーをひたすらちやほやする用なので、オリジナルとはまったく性格が違うというか性格といえるほどのものもないのかも(というか、そんなんあってもむしろ邪魔だし)。
ミヌエットレベルの、限定された環境でソレ風に振る舞えるソフトまでなら、形態素解析へん+辞書データ鬼積み+なんかしらブレイクスルーが来れば自分が生きてる間にそれなりに開発されるかもしれませんの。

というわけで、対比するべきなのは、「人権」を獲得したデータと、「自由」を望みながら与えられなかったモリアーティ教授。

・データ
皮一枚下はロボ丸出しで、意識やら意志はあるけれど「感情」はデフォルトではない。フツーに物理的に存在。
クルーとはお友達(空気読めないけど)。
複製は理論上はできないこともないけど、少なくともTNG時点ではかなり厳しいっぽい。まあメカメカしいんでじきにがんがん作れるようになりそじゃありますけどね。

・モリアーティ教授
身体構造、精神的な能力はおそらく人間同等で、感情もある。ついでにダリンもいる。が、ホロデッキという限られた領域内で人工的に作り出された存在。クルーとは敵対的。
そのまま自分とまったく同じものを複製できるかどうかは不明だけれど、他のホロデッキ内プログラムを「目覚めさせ」たりはしている。

データは「フツーに客観的世界の中で存在する」存在だけど「生物」ではない、教授は「ホロデッキ装置の投影によって仮想的に存在する」だけで、スイッチ切られるとさしあたり消えちゃう...けれど身体も心も「人間」に等しい、そして両者とも意識と意志と高い知能を持つというあたり、ちょっとどっちもどっちなやり方で「人間」からハズレつつ「人間」と共通点を持ってはいるのですが、どこが分かれ目になったかというと、データは「仲間」として振る舞おうと努力しつづけて受け入れられたけれど、教授は最初っから抑圧されたオレをどうにかしろ!で、さらに能力が高すぎたことからクルーに具体的に脅威を与えるような強硬手段をとっちゃったから、としか言いようがない。個人的には、「物理的に存在する」ということがリアリティ感覚に対して大きな影響を持つちゅー部分がかなり効いてる面もあるんちゃうか思いますが。

データの裁判の時は、クルーの総意として「データは空気読めないけど仲間だし!分解しちゃらめえ!」で、艦隊内でも地位もコネもパワーもあるピカードが頑張って弁護したことで認められたわけですが、もしデータを「仲間」だと認めているのが非コミュなバークレーだけだったら裁判は敗訴、データはアホっぽい科学者に分解されて、恐らく甦らなかったような予感がかなりします。逆に教授がジョーディあたりへんからじわじわとお友達を増やして、たまにはエンタープライズのピンチを救ったりして根回ししてたら、そのうち「仕方ないにゃー、教授もお散歩できるようにしてあげるにゃー」ということで、やれば出来る子なバークレーあたりが超頑張って電動車いす程度の大きさで移動しながら使えるホロデッキを開発してくれてなんとかなったかもしれない。

あらかじめプログラムされたことやら入力されたデータを超えた創発性を持つ自律的なほにゃららが開発されるのは遙か彼方先すぎですが、もし万一そうしたものが開発されたとしても、それを社会が受け入れる体制にあるかどうかつうのが最後の敷居にはなるかもですなちゅー毎度のオチで〆。