『ゴーストインザシェル』(ネタバレはないけど根幹バレはある)
速攻見てきました。
自分の印象としては、大前提として劇場で見る価値はあるんだけれど、
「大変な野心作である」「けど、成功しとるかどうかちょっとわからん」
という感じ。
原作(というか押井版)リスペクト(美術とかギミックとか犬とか犬とかアンド犬とか)は随所でがっつりやってるんだけど、押井版の彼岸へ行く方向なんで、押井版の完全実写化を期待していくと腰が抜けそうな予感もしますが。
もうちょい言うと…
押井でも、P・K・ディックでもいいんだけど、20世紀的な仮想vs.現実、ロボットvs.人間て軸を立てて、現実であったり、人間なるものを相対化するって枠組はまあいいとして、相対化した後のその先どうすんのよ問題ってのがあると思うんですわ。
20世紀には『接続された心』で、電子ネットワークによるアイデンティティの複線化を肯定的に評価してたシェリー・タークルが、『一緒にいてもスマホ』で、スマホの偏在マジやばくないすかとか言い出すご時世ですからね…
なかなかその先をやる作品てのが出てこなかったところで、典型的な相対化組である攻殻の実写化でこれやってくるかと結構びっくりしました。
ただそれが成功してるかどうかは、ちょっとわからんというか、どうなんだろなあというところもあり。
押井が「奇妙な映画」と評してるのは相対化組の実写化作品で、相対化の向こうに行こうとしてることだと思うのだけれど、「でもブレードランナーほどうまくいってるわけではない。」と言ってるのは、たとえば『ブレードランナー』のプリスとの格闘シーンや、ルドガー・ハウアーのアドリブで押したラストシーンは、レプリカントという存在のいびつさであるとか、哀切さであるとか、ものすごい厚みで表現してるわけだけれど、その勢いで『ゴーストインザシェル』が「ゴースト」なるものを描けてるかというと、いやちょっとそこはどうなんかなー…というあたりでしょうか。
ただ「ゴースト」って映像化するのは、ほんとに最高難易度だと思うんですよ。セリフで説明したらくっそダサくなるほかないし。押井版の難解会話はアニメであのキャラデザであの声優だから出来るんであって、実写でやったらこいつらなんやねんてなっちゃう。
スカーレット・ヨハンソンも某キャストも別に悪い演技をしてるわけじゃないんだけど、脚本演出撮影演技が神がかった勢いで噛み合って、ようやく出来るかどうかという世界だと思うんで。
あと、
・前半の流れがちょい雑
・たけし周りがちょい雑
見せ場ちょいちょい挟んでくるんだけど、なんだかなー…感も。少佐できるのはヨハンソンかシャーリーズ・セロン先生かくらいだけど、荒巻できる日系東洋系の俳優ならたくさんいるわけで、たけしにこだわらない方が良かったんじゃないですかね…
・この社会での政府と企業、技術の関係がよーわからんかった。
大企業が政治に超噛んでる雰囲気はあるんだけど、説明が足りんというかなんというか。
このへんは「この世界の社会はこういう感じで回ってます」的な説明を必要最小限で効果的に入れてた『パシフィック・リム』を見習ってほしかった感。というかB級かそうでないかって、関わってる組織とか、その正統性がどんだけ上手に描けてるかにかかってる気がする。アホなサメ映画で米海軍とか出てくることありますが、描写ぺらっぺらやしね。
なにはともあれ、まさかこう来るとは思ってなかったですが、攻殻がこうなったとなると、『ブレードランナー2049』はどうなるのかしら…という気もしつつ。