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奥崎謙三生きてたのか...

【平成17年版 訃報一覧】 ひとりひとりには、愛する人がいて、愛してくれた人がいて、夢を語ったり絶望したりを繰り返し、それぞれの往く末を思い描きながら生きていたはずだ...明日また生きるぞ! - IMITATION GOLD
【訃報】 『ゆきゆきて、神軍』の奥崎謙三、死の直前まで「バカ野郎!」と叫ぶ - IMITATION GOLD
ていうか、今年亡くなったそうなんですけれど。物凄い時差が発生しています。
どっかでちらっと書いたような気がするんですが、自分、広島生まれでして、デルタでまったいら部分が広い&原爆で一度焼けちゃってるから、川×橋から橋へ東西に走る通りで座標をだいたいとってれば、地図がなかろうがまず迷うことはないというあたりで、たまーに学校ぶっさぼってちゃりちゃりとママチャリでのんきに走ってたり、図書館でぽんやりしてました。お金もなかったですし、遊びに行くところも特になかったし。なにせ制服のまんまうっかり喫茶店でも入ろうものなら、市内各所にうじゃうじゃといる卒業生やらなにやらに学校へ通報されかねないつー世界でしたから。
川沿いの道はぽかぽかで、瀬戸内海沿岸地方にありがちな褪めた淡い空は今よりははるかに広くて(なにせバブル前ですから)、で、ぼえーとお約束に広島空港(現在は広島西空港。つーか現在の空港遠すぎ。修正希望。)とかのへんまで遠征したり。で、ある日やたらに高い塀の続いているところに出くわし、なんじゃこりゃとちゃりちゃりしていたらば、要するにそれは広島拘置所で、あああああああああ!ここか!ここにアレがいるのか!と、ぶたまげた記憶があります。当時、奥崎は大竹市の事件で広島拘置所に収容中でしたから。

〜追記〜
神軍平等兵・戦歴
を見ると、記憶が前後しているのかも? 映画の一般公開は87年、映画の最後はいきなりとぎれて、奥さんが亡くなったこと、あと、発砲事件の概要を書いたテロップかなにか出て...本当のラストシーンはなんだったっけ。で、広島拘置所見た時は冬?。なので既に奥崎は熊本刑務所に行ってたのかも。しかし、判決が出てから入所までどこでなにしてたんだろう。
〜追記終わり〜

奥崎。なんだったんでしょうかね。電波といえば電波だけど...でも彼は物凄く「正気」だし。カメラがある、その前で過去の罪を追求していく、というところで演じちゃった部分もそれは(かなり大盛りに)あるんだろうけど...いかんともしがたく「本気」だし。「電波」という枠を軽く越えてたからなあ...あらゆる意味で衝撃的な映画でした。テロップ入ってた島根弁、隣県だし、祖母も一応島根出身だというのにマジわからんかったし。
「行き行きて神軍」、たしかどこだったか...なんかすごい中途半端なところで友達と見たんじゃなかったかと思いますが、後に、稀代の人物に出くわしてしまった原監督の苦渋に満ちた文章も読んだ記憶。なぜか奥崎と奥さんがめさめさラブかったっぽい(手紙かなんか引用してあったようなうろおぼえ)のが印象に残ってますが。又吉のところもなんかそんな感じですよね。柳田の「妹の力」だったか、女性の予言者というか占い師というか霊能力者というか新興宗教の教祖というか、まあそんなのが誕生するには、まず家の中の男が信じなきゃだめだーめとか書いてあったような気がしますが、奥崎が奥崎であり、又吉が又吉であるには、たぶん病院にブチこんだりせずに彼らを彼らとして認めて支え続ける奥さんの力があるんだろうなぁ...愛ってなんというかスゴい。普通、ぶちこみとは言わないまでも三行半ですよ。

ところで、なぜ奥崎は昭和天皇を「パチンコ」で狙ったのか、武器としては侮れないとはいえ意味なく気になっています。一般参賀だったらボディチェックくらいあるんだろうけれど、実際、陛下に届きかねないほどの威力のあったパチンコは持ち込めているわけで...当時は恐ろしいことに防弾ガラスとかなかったようですし(ありえねー...て、それは皇室にどうこうする日本人がいるわけがないという前提があったんだろうなぁ)
山田風太郎柳生十兵衛三部作*1のラストで、徳川幕府の権威はいとも軽やかに相対化していた柳生十兵衛が天皇制どうすんの?て問いの前に立ちすくんで判断停止して、そのまま終わっちゃうっつー。安直に作者に還元するのはアレですが、「戦中派不戦日記」とコンボで読むなら、「柳生十兵衛死す」は結局のところ「天皇(制)」という空虚なる中心(ウヘア)というか、言及不能な穴の縁を縁取るように書けるぎりぎりまで行くというアプローチで書かれたなにか、であって、「書かれなかったこと」が一番重要なんだ、という作品としか思えず、風太郎のような大人(たいじん)にしてそれでもまだ天皇制は語りえないものなのか、と、うわあああでしたが。
奥崎はなんで拳銃ではなくパチンコで狙ったんでしょうか。思いつきでかましちゃったから、という気も激しくするのですが、なにしろ上官追求にはブツもってってるわけですから。て、超基本文献「ヤマザキ、天皇を撃て」も読んでないんですけど。

ヤマザキ、天皇を撃て!―“皇居パチンコ事件”陳述書

ヤマザキ、天皇を撃て!―“皇居パチンコ事件”陳述書

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ぐぐってみたら出てきました。当時の日本のものづくりシステムのへたれっぷりの時点で泣ける。太平洋戦争は物量で負けたというイメージが一般にありますが、んなこたーない、人づくりで負けてたんだという分析。確かに、一般兵士のうち自動車免許持ってる奴がほぼいない=物資輸送が人力の国(銀輪部隊ってのもあったな)と、多くの人が持っている&本国で訓練して車でがんがん輸送上等の国とじゃなにかが果てしなく無理。奥崎のことには最後の方で触れてあります。フィリピンだけど大岡昇平の『野火』もすさまじかったですが...南方戦線おそるべし。
万里長征シテ未ダ還ラズ
もいっちょ、奥崎の経歴と人となりの紹介。ルサンチマン物凄くたまってそな流れ。

おそらく奥崎謙三は生きて再びこの社会の日の目を見ることはないと思うんですけれども、彼の闘いの終末というか、死にざまというか、どういう終わり方をするのか、ぼくは見とどけていたいというふうに思います。

...まさか出所後、あんなことやらこんなことやらして、85歳まで生きるとは。恐るべし。

おまけ。又吉イエスネタといえばこのページ。

*1:物語内の時間で並べると、「柳生忍法帖」「魔界転生」「柳生十兵衛死す」の順。「魔界転生」がもっとも有名ですが、十兵衛萌えを外して単純なおもしろさで言えば「柳生」に一票。原作に忠実な風太郎作品のビジュアル化をおそらく初めて成し遂げたせがわまさきが「甲賀忍法帖」の次に「柳生忍法帖」の漫画化を選んだのは素晴らしい。風太郎愛好家として非常なセンスを感じます。次は「魔界転生」なのか別のことにいくのかわかりませんが。個人的には短編もやってほすい...「忍法聖千姫」とか。そして「死す」は...ものすごく異様な作品です。江戸&室町時代の混交という大がかりなギミックは確かに風太郎なんだけれど、明らかに面白くない。キャラ萌えされるのがイヤだったのか、十兵衛のキャラ崩しまくりだし...