仕事用のめもとか。

メディア等気になることを適当に。

2005/11/02 世耕参議院議員講演会@広報学会。

広報学会というのは、アカデミシャンも多いけれど実務に就いている人の方が多いかもしれない、文系学会としてはやや珍しい感じの学会です。経済系だとこういうタイプの学会多いのかな?
日本で広報学、というのはまだまだマイナーだし、設置している大学もそんなにはないんじゃないかな? ほんとはメディア・リテラシーとか教えるなら、そっちの意味でも広めていったほうがいいと思うんですけどね。
ちなみに場所は日本プレスセンタービル、日本記者クラブでした。会費2000円で会員100人…席はほとんど埋まってましたね。

で、世耕弘成議員の講演会。広報マンとしてどういう人生歩んできたか、また自民党の歴史的な大勝の時になにをしていたのかお伝えする、という趣旨で。ICレコーダー持ってないし、MDウォークマンもっていくの思いっきり忘れたんで、魂の殴り書きメモで。
おそらく正式な議事録とかは発表されない…とは思うので、本当はちゃんとしたもの作らなければならない、あくまで「適当にまとめながらメモを取り」「適当にそれを解読したもの」ということでご覧下さい。

当日配られた略歴+補足
1962年生まれ
1986年早稲田政経卒、そのまま日本電信電話入社(13年間の在籍中のうち、約8年は広報に。おそらく企業留学としては初めてPR分野をボストン大学で学び、企業におけるスキャンダル・マネージメントという主題で修士号取得)、
1998年参議院議員初当選、
2000〜2003年:自由民主党広報本部マルチメディア局長、
2004年〜:党改革実行本部事務局次長
2005年選挙期間中〜:幹事長補佐・広報本部長代理
2005年11月1日:参議院総務委員長

■政治の世界に入ることは考えてなかった。
同姓の伯父が参議院議員で、亡くなった後に補選で出馬することになったが、自分は大阪育ちで選挙区(和歌山どっか)に行ったことがほとんどない、選挙の手伝いもしていない。
伯父が亡くなった時に、息子も娘婿も政治はイヤだと。当時は和歌山で自民党が弱かったせいもあって、県議なんかも出たがらない、で、人が決まらないまま公示日が迫ったところで、当時候補者選定の責任者になっていたオミナントカという人の娘がたまたまNTTの同期で、そういえばうちの社にセコー君っているよ?ということで自民党から呼ばれる。ずっと広報畑を歩いていて、ひょっとしたら独立することはあるかもしれないけど、広報ずっとやっていこうと思っていた。

#ただ、呼ばれてなんで出馬決意したのか、というのは話されなかったです。幹事長に呼ばれて社内大騒ぎとはおっしゃってましたが。

■「広報マンとしては場数を踏んでいる」←これだけは本人発言ママ。

入社時:NTT株ブーム。NTTは神!なムード
が…
リクルート事件:役員3人逮捕。報道論調も氷河モードへ。なにやってもネガティブにとられる
・NTT分割論(案):1年くらい当時の郵政省(10地域会社+1長距離電話会社案)とNTTで戦われる。→どうにか5年間の議論凍結へ。
留学:ボストン大コミュニケーション学部へ
帰国:当然広報へ。係長、課長と出世。この間収賄逮捕事件やら阪神大震災対応を経験。課長時代には、2週間に一度行われる社長記者会見の準備、対応などを担当。

■議員になってびっくり。政治にコミュニケーション戦略がない…

  • 就任当時は森内閣(旧官邸時代)

板一枚向うに番記者数十人がたむろしているところで執務。出てくると、どわーと首相に群がって、四方八方から色んなことに対するコメントを求める。それに対する準備はナシ。答えるのも気分でかなりいい加減。

←総理のコメントだから、海外にそのまま出る場合もある。国益にかかわるだろ、と誰かなんとかしないとマズいだろうと、広報ちゃんとやる必要性を訴えつづけることに。300億予算もっている官邸広報(※部署名いい加減。よくわかってません)もあるんだけど意味ナシ。

  • 小泉政権に。

言葉に関しては物凄い天才だと自分のことを思っているし、実際に天才。
その分、話マジ聞いてくれない……折りに触れて色々アピールしてみるんだけど、レポートぽい。終了。

田中真紀子外相解任時、支持率が急速に低下。さすがに弱っていた小泉に、ちっちゃい事務所でいいから1億くらい予算ください戦略室作りましょうと提言。
この時は小泉、話は聞いてくれたものの、それはデータ重視でやるのか?と問われ、そうですと答えると却下。支持率下がろうがやらないきゃいけない決断がある、で終了。

・安倍を中心に党改革はじまる。その中でポストも得て広報改革に。
2005年1月:6社コンペを行い、PR会社プラップジャパンと契約。選択基準は「党職員の抵抗と戦えること」
2005年9月:衆院選大勝
←全体のマネジメント改革があり、その中で広報も改革を行ってのこと。

■2005/9/11衆議院選挙
8/4:参院で否決。この時、7分ばかりの賛成討論を行う。
←首相がこれを言いたいことがよくまとまっていると評価。みんなに配っとけと。
←安倍:広報責任やってよ。即日「広報本部長代理」
 コミュニケーション戦略がまったくなくなるのは選挙の時。みんなバラバラに応援にいったりなんだかんだ… マニフェストどうするか、小泉どこに出すか、などもほとんどその場の勢いのみ。
←武部:世耕君参院だし、そのへんまかせるから(はぁと)
 「幹事長補佐」に任命。責任はとるからがんがんいっちゃってくれと。

 この時の最大抵抗勢力は党職員。従来はサイト、広報紙、ポスターなど各部門が縦割りで完全にバラバラ。連携まったくない、というわけで、広報に関わる業務を行っていた党職員15人ほどをコミュニケーション戦略チームとして編成。

■9.11選挙でやったこと

  • 毎朝10時から前日出たメディアの記事や番組をチェックし、どこが良くなかったか洗い出す定例会議を行う。
  • 電話でのメッセージ(嘱託5人くらいで受けてる。所属は情報調査局)のノートもとりこみ、各候補者に伝える。その髪形ヘンとか、くそ高そうな時計してますねとか。
  • 世論調査機能(電話のプッシュホンとかで?)の活用。従来は当落予想のみに使っていたものを、なにを基準に投票するか、また小泉と岡田の好感度なども。
  • Faxでの候補者へのニュース。候補者周辺はとにかくテンパっているので、すぐ眼を通せるように関連報道内容(例:岡田代表うっかり発言)などを1枚1テーマに絞って70通くらい送付。
  • 潮目を読む。

8/4:投票基準。郵政民営化が圧倒的
〜じわじわと民主党の年金論が上がっていく。
8/28:郵政民営化問題と年金が拮抗
8/30:公示日。郵政民営化優位に戻る。小泉露出が多かったせいかも。
〜じわじわと年金論
9/4:小泉3番組ハシゴ。郵政民営化優位に戻る。
←年金論をやろうかと準備もしていたが、もうこうなったら郵政民営化論一本に絞ろうと決定。

  • 失言管理。

 なるべく出したくない、本人も出たくない武部幹事長。が、8/28にテレビで幹事長討論をやることに。前夜、竹中と世耕、武部で超特訓。また5項目に争点まとめた1枚の紙を渡して、てんぱったらコレを見ろと。
 本番。スタジオ内にいたら連絡できないために、外にスタッフ張りつけ。やっぱり消費税上げるととられる発言をする武部…メモを入れて番組中に訂正させる。続いて放送が済んだ後、番記者にさくっと否定。
→初期消化重要。今までなら大火事だったかも。公式にささっと取り消せば、マスメディアは引っ張らない。野党は引っ張るけど。
#野党だけが引っ張っても、マスメディアが反応しなければ、逆に細かいことをほじくってるように見えちゃう、というのもあるのかなと思います(ワタシ)

 「これで公認するなら票は入れない」という党への電話が2000件に。田中真紀子解任時と同等の反応。
 小泉:最初っから公認なんかするつもりないヨ。
 武部:苦…………まあ仕方ないか。
 小泉が公認するつもりなかったので無問題に。

  • 自民党最大のリソース、小泉をどこに投入するか。

 データ重視で接戦区に小泉を投入。北海道、九州から頼むから来てくれと言われたが、接戦区を可能な限り効率よく廻れるスケジュールに設定。
 以前は党職員のその場のノリで決定。前回参院選の最後の演説は、「最後だから東京。東京といえば雷門」で決定されたが、実はこの区は鉄板で自民党が勝つ情勢だった。無駄。
 今回の最後は千葉。確実に夜のニュースのトップになるのがわかっているため、通常の応援演説はバスに候補者やらスタッフやら満載で行うが、小泉以外全員下ろして下からライトアップ。夜空を背景に一人国民に向かって叫ぶ首相の図。

というかんじで講演は締め。結論としては、党改革がずーっとあって、その延長線上に広報があったと。「悪いものを良くみせること」は広報で出来ない、とかなんとか。

主な質問コーナー。敬称略。一部、メモをとりきれず、あまりにメモが意味わからんところは略しています。井之上先生も質問されてたのに…ごめんなさい。

<名前ききとれず。北海道大、広報論専攻で助手の方>
・インターネット、blogの普及はどーですか。
世耕:政治へのネットの影響は弱かったが、blogという発言の履歴を積み重ねられるメディアでちょっと変わってきてるかも? 民主党の方がネットへの取り組みは早かったが、ブロガーとのイベントで先行できたのは良かった。公職選挙法での定義が曖昧なまま民主党に先行されるかたちになり、とりあえず今回は更新を止めさせたが、次期国会で改正案を出して明確なルールづくりを行う。

<井上@東洋大>
コミュニケーション戦略チームは選挙対応のみ?
世耕:週1でミーティング。恒常的に行う。議員でやりたがっている人もいるが、政治家が入ると議論議論になりげ…

<名前ききとれず。フリーのジャーナリストの方>
・ポスト小泉どーすんの?
世耕:自分は安倍さんで。党改革案に対して小泉が派閥をどうするかが書いてない、と一度却下したが、自分たちが行っている党改革は金・情報は党本部から供給するというモデル。派閥は誰を総裁にしたいか、で成り立つべき。9.11夜に小泉、安倍、世耕で新人は派閥には入れないと決定。

<市川@江戸川大>
・国際コミュニケーションは?
世耕:それは内閣、官邸で行うべきことだが、問題は水面下の話が出来るパイプが中韓に関してはズタズタになっている。議員外交が必要ということでこのほど訪韓した。

<濱田@江戸川大>※この講演会を仕切られた方です。
・タイゾー問題。
世耕:マスコミに完全包囲されて助けを求められるが一度突き放す。連休明けに記者会見を行いたいと向うから申し出があり、議員であることや選出してくれた有権者を軽く見るような発言をしてしまったことを謝りたい、と言ってきたのと、党批判にもなりかかっていたので、会見はいいけど最低30分は質問答えなきゃいけないんだぞ、と念を押してそれでもやると言ったので会見を開くことに。アドバイス(どんな細かいことでも絶対にウソをつくな/相手が言い終わる前にしゃべり始める癖があり、攻撃的に見えるので、言い終わるまで待って、それを飲み込んでから口開け)やら模擬質問やら。まぁなんとかなって良かった。
自分も大学卒業→一流企業就職で、フリーターの気持ちがわかるかと言われれば微妙なので、彼には期待している。

オオゼキ?@読売新聞>
・トップとはどうなの?
世耕:小泉天才すぎ。言うこときかない。公募ポスターのコピーやCMなどはかなり彼のセンスで。否定的な表現はふさわしくない、下手すると放送コードにひっかかると進言しても、聞くわけないヨ…

<大森@共同PR>※一有権者として聞きたいとの発言があった記憶。
・小泉政権は任期があと1年なのに衆院は任期4年。政権の信任に衆院選ていうのは根本的に矛盾があったんじゃ。
世耕:1年以内に小泉改革を継承する後継者を必ず作るという答えは用意していたが、単に聞かれなかった。

<上野理事長>
・総括。広報の根本、基本を大切に。
 外務省を含めた国家広報もなんとかしていただきたい、という締め。

感想:やっているのは広報の基本。官邸やら党職員やらウザいところでやるのは大変だったと思うけど、ほんとに基本。……だけどその基本が凄すぎ。